自己肯定感と自己効力感の違い|土台と踏み出す力の関係

「自己肯定感」と「自己効力感」。どちらも自分に向けられた感覚を指す言葉ですが、見ているものが違います。

自己肯定感は「自分は、ここにいていい」という存在についての感覚。自己効力感は「自分なら、これができる」という遂行についての見通しです。

混同するのは無理もありません。文部科学省 国立教育政策研究所の資料が、「自尊感情」について「一般的には、『自己肯定感』『自己存在感』『自己効力感』等の語などと、ほぼ同じ意味合いで用いられているようです」と書いているほどです。言葉の側が整理されていないのです。

この記事では、二つの違いを定義・測り方・何に効くかの三方向から整理します。そのうえで、研究が示す「別物でありながら一本の線でつながっている」構図、そして実務でいちばん多く相談を受ける「自己効力感は高いのに、自己肯定感が低い」状態に何が起きているかまでを扱います。

結論|違いは「存在」と「遂行」にある

先に全体像を置きます。

自己肯定感 自己効力感
見ているもの 自分の存在・価値 特定の課題を遂行する能力
言いかえると 自分はここにいていい 自分ならこれができる
英語 self-esteem self-efficacy
整理した人 モリス・ローゼンバーグ(1965) アルバート・バンデューラ(1977)
範囲 その人全体に及ぶ 課題・場面ごとに異なる
成果との関係 できなくても保たれうる 「できる」の見積もりそのもの
代表的な尺度 RSES(10項目) GSES(16項目)
強く効く先 感情(満足感・幸福感) 動機づけ(挑戦・粘り)

いちばん下の行が、実務では決定的に重要です。二つは効く場所が違います。根拠となる研究は、このあと見ていきます。

自己肯定感とは|訳語が多く、意味の幅が広い

自己肯定感のもとになっている概念は、アメリカの社会学者モリス・ローゼンバーグが1965年の著書『Society and the Adolescent Self-Image』で扱った self-esteem です。同書で示された10項目の尺度(ローゼンバーグ自尊感情尺度、RSES)は、現在も世界で最も広く使われています。日本語版は山本真理子・松井豊・山成由紀子(1982)の訳が最も多く使われています。

Rosenberg, M. (1965). Society and the Adolescent Self-Image. Princeton University Press.
山本真理子・松井豊・山成由紀子(1982)「認知された自己の諸側面の構造」教育心理学研究, 30, 64–68.

ここで押さえておきたいのは、self-esteem は本来、プラスにもマイナスにも振れる中立的な語だという点です。英和辞典を引くと「自尊心」「プライド」「うぬぼれ」といった訳が並びます。

「自己肯定感」は日本で広がった言葉

日本語では、この self-esteem に対して自尊感情・自己肯定感・自己評価・セルフエスティームなど複数の訳語が並立しています。学術の場では「自尊感情」、一般の場では「自己肯定感」が優勢という具合に、使われる場面で呼び名が変わります。

さらに厄介なのは、「自己肯定感」が日本で広まる過程で、意味の幅が元の self-esteem より広がったことです。自分を好きである、ありのままの自分を受け入れる、自信がある、前向きである——こうした複数の内容が同じ一語に詰め込まれています。

国立教育政策研究所の生徒指導リーフ Leaf.18「『自尊感情』?それとも、『自己有用感』?」は、この状況をはっきり書いています。

「自尊感情」は心理学用語 Self Esteem の訳語として定着した概念です。一般的には、「自己肯定感」「自己存在感」「自己効力感」等の語などと、ほぼ同じ意味合いで用いられているようです。
国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター「生徒指導リーフ Leaf.18」

公的な研究機関が、自己効力感まで含めて「ほぼ同じ意味合いで用いられている」と認めているわけです。二つの違いが分かりにくいのは、読む側の不注意ではありません。言葉の側の問題です。

自己効力感とは|課題ごとに決まる見通し

自己効力感は、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラが1977年の論文で示した概念です。

バンデューラは、人が行動を起こすかどうかを決める要素を二つに分けました。

  • 結果期待……その行動をとれば良い結果が得られる、という予測
  • 効力期待……その行動を自分は実行できる、という見通し

「運動すれば健康になる」と知っていても、続けられる気がしなければ人は動きません。前者が結果期待、後者が効力期待で、この効力期待こそが自己効力感です。知識と行動のあいだを埋めるものだと言えます。

Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.

決定的な違いは「課題ごとに決まる」こと

自己肯定感と自己効力感の、いちばん大きな構造上の違いはここです。

自己肯定感は、その人全体に及ぶ感覚です。一方自己効力感は、課題や場面ごとに別々に存在します。

同じ一人の人のなかで、こうなることが普通にあります。

  • 数字を詰めて資料をつくる自己効力感は高い
  • 30人の前で話す自己効力感は低い
  • 初対面の人と関係をつくる自己効力感は中くらい

ですから「あの人は自己効力感が高い/低い」という言い方は、厳密には成立しません。「何についての自己効力感か」を外すと、話がかみ合わなくなります。

日本で広く使われている一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES、16項目)は、この課題ごとのばらつきを越えて共通する部分を測ろうとしたものです。

坂野雄二・東條光彦(1986)「一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み」行動療法研究, 12(1), 73–82.

バンデューラ自身が引いた線|社交ダンスの例

自己効力感を提唱したバンデューラは、著書『Self-Efficacy: The Exercise of Control』(1997)のなかで、二つを混同しないよう明確に線を引いています。そこで使われている例が分かりやすいので紹介します。

バンデューラは、自分は社交ダンスがまったくできないと書いています。しかしそのことで自分を低く見積もるような気持ちには、まったくならないとも書いています。

理由は単純です。彼は社交ダンスに自分の価値を預けていないからです。

ここから、本質的な整理が得られます。

  • 自己効力感が低い領域があっても、自己肯定感は揺らがない……その領域に自己価値を投資していなければ、「できない」は単なる事実にとどまります
  • 逆に、ある領域に自己価値を預けていると、そこでの失敗が存在の否定にまで届く……「この仕事ができない」が「自分はダメだ」に飛躍します

同書はさらに、能力についての信念と、自分を好きか嫌いかのあいだに固定した関係はないという点を指摘しています。

実務で分かれ目になるのは、この二つ目です。能力の評価が存在の評価に流れ込むかどうか。その通り道を細くしておくことが、自己肯定感を土台と呼ぶことの実際の意味です。

Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. W. H. Freeman.

研究が示すこと①|強く相関するが、別のものを測っている

「違うと言われても、実際にはほとんど同じではないか」という疑問は当然です。実際、研究の歴史もそこで一度つまずいています。

初期につくられた一般性自己効力感の尺度は、ローゼンバーグの自尊感情尺度との相関が r = .75〜.91 に達していました。統計的にはほとんど同じものを測っていたことになります。これが「二つは同じではないか」という議論を長く招きました。

この問題に対して、ギラッド・チェンらは測り方そのものを作り直し、自尊感情と区別できる項目で構成した新しい一般性自己効力感尺度(NGSE、7項目)を開発しました。

自己効力感は動機づけに、自己肯定感は感情に効く

そのうえでチェン、ガリー、エデンが2004年に発表した研究が、二つの違いを実証的に示しています。学業の場と職場の場の両方のデータを使った検証の結果は、次のとおりです。

  • 一般性自己効力感は、動機づけに関する変数とより強く関係していた
  • 自己肯定感(自尊感情)は、感情に関する変数とより強く関係していた
  • 課題成績に至るまでの経路も、両者で別々だった(動機づけと感情が、それぞれ違う形で仲立ちしていた)

著者たちはこの結果から、二つを区別しないことには測定の精度・妥当性・成果の要因理解の面で代償を伴いうると結論しています。

Chen, G., Gully, S. M., & Eden, D. (2004). General self-efficacy and self-esteem: Toward theoretical and empirical distinction between correlated self-evaluations. Journal of Organizational Behavior, 25(3), 375–395.
Chen, G., Gully, S. M., & Eden, D. (2001). Validation of a New General Self-Efficacy Scale. Organizational Research Methods, 4(1), 62–83.

ここは研修設計にそのまま効いてきます。「動いてほしい」のか「満たされてほしい」のかで、手をつける場所が変わるということです。

  • 挑戦する人を増やしたい、粘れる人を育てたい → 自己効力感に効く打ち手
  • 職場の満足度を上げたい、心の消耗を減らしたい → 自己肯定感に効く打ち手

エンゲージメント調査の結果が動かないという相談で、よく見つかる原因がここにあります。測っているものと、打っている手が別の方向を向いているのです。

研究が示すこと②|自己肯定感は自己効力感を経由して行動になる

二つは別物ですが、切り離されてもいません。複数の研究に共通して示されているのは、自己肯定感が行動に結びつくとき、そのあいだを自己効力感が仲立ちしているという構図です。

効果の約74%が自己効力感を経由していた

中国河北省の中高生480名(平均14.9歳)を対象とした2021年の研究では、自尊感情が高いほど学習に積極的に取り組むことが確認されました。注目したいのは、その経路です。

分析に学業的自己効力感を加えたところ、自尊感情から学習への取り組みへの直接の影響は統計的に有意でなくなり、効果の73.91%が自己効力感を経由していたことが示されました。

つまりこの研究では、自尊感情は自己効力感を通る以外の道では、ほとんど行動に届いていなかったことになります。

Zhao, Y., Zheng, Z., Pan, C., & Zhou, L. (2021). Self-Esteem and Academic Engagement Among Adolescents: A Moderated Mediation Model. Frontiers in Psychology, 12, 690828.

大学生でも同じ構図が確認されている

中国3省6校の大学生・専門学校生940名を対象とした2026年の研究でも、同様の結果が報告されています。学業面の自己肯定感は前向きな心理的資質に直接も影響しますが、効果の51.85%は一般性自己効力感を経由していました。

こちらは直接の経路も残っているため、自己効力感が果たす役割は「一部の仲立ち」にあたります。

Li, J., & Yan, X. (2026). The association between academic self-esteem and college students’ positive psychological qualities: the mediating role of general self-efficacy. Frontiers in Psychology, 1788167.

この結果が実務に示すこと

二つの研究を重ねると、次のことが言えます。

  • 自己肯定感を高めるだけでは、行動は自動的に変わらない……効果の大半が自己効力感を通っている以上、その経路が細いままでは結果に届きません
  • 自己効力感だけを追いかけても土台が要る……どちらの研究も、出発点を自己肯定感に置いています
  • 順序がある……自分を認められる → 「やれそうだ」と思える → 行動する、という流れです

研修の現場で自己肯定感と自己効力感を切り離さずに扱うのは、この順序があるためです。

なお、いずれも中国の学生を対象とした研究であり、日本の職場にそのまま当てはめられるわけではありません。二つの概念が別物でありながら一本の線でつながっていることを示す手がかりとして捉えてください。

「自己効力感は高いのに、自己肯定感が低い」人に起きていること

二つが別物だということは、一方が高くて他方が低い組み合わせが存在するということです。実務で相談が多いのはここです。

自己肯定感が高い 自己肯定感が低い
自己効力感が高い 挑戦し、失敗しても折れない。もっとも安定した状態 成果は出るが、消耗する。成果が止まった瞬間に崩れる
自己効力感が低い 穏やかだが、動き出さない。現状にとどまりやすい 挑戦を避け、失敗を能力のせいにする。回復に時間がかかる

成果で自分の価値を買い続けている状態

右上のマスが、いわゆる「優秀だが苦しい人」です。職場では評価が高く、本人も「自分ならできる」と思えています。それでも自己肯定感が低いままだと、次のことが起きます。

  • 自信が条件つきになる……「成果を出している自分」なら認められるが、素の自分は認められない
  • 休めない……手を止めると価値が下がる気がするため、成果を出し続けることでしか安心を保てません
  • 成功しても埋まらない……達成しても「まだ足りない」が残り、次の課題にすぐ移ります
  • つまずきが一気に効く……異動、昇進、役割の変化などで成果が出ない期間に入ると、支えが一度に失われます

何度成功しても自己肯定感が積み上がらないのは、成果は能力の証明にはなるが、存在の承認にはならないからです。測っている対象が違うので、いくら積んでも別の口座には入りません。

管理職層で「急に動けなくなった」という形で表面化するのは、たいていこのマスの人です。自己効力感を高める方法だけを足しても解決しないのは、そのためです。

逆のパターン——土台はあるのに動かない

左下のマスもあります。自分を否定していないし、人間関係も穏やかなのに、新しいことに手を出さない人です。

この場合に足りないのは安心ではなく、「やれそうだ」という具体的な見通しです。励ましよりも、小さく区切った課題と、やり遂げた確認のほうが効きます。達成体験の積み方は達成体験とはで詳しく扱っています。

どちらのマスにいるかで、打ち手が逆になる

ここが、二つを区別することの実利です。

  • 右上の人に「もっとできる」と励ますと、追い詰めることになります
  • 左下の人に「そのままでいい」と伝えると、動かない理由を増やすことになります

同じ「自信をつける研修」で両方を扱えないのは、この理由によります。

自己有用感との違い

教育の現場では、ここに自己有用感という三つめの言葉が加わります。並べて整理しておきます。

国立教育政策研究所の定義は明確です。自己有用感は、他人の役に立った、他人に喜んでもらえたという感覚であり、相手の存在なしには生まれてこない点で「自尊感情」や「自己肯定感」等の語とは異なると説明されています。

何についての感覚か 他者が必要か
自己肯定感 自分の存在・価値 必要ない
自己効力感 特定の課題の遂行能力 必要ない
自己有用感 自分が誰かの役に立っていること 必要

同資料は、自己有用感の獲得が自尊感情につながることは想像しやすいが、自尊感情が高いことは必ずしも自己有用感の高さを意味しないとも述べています。一方通行なのです。

「褒める」と「認める」の違い

同じ資料には、職場にもそのまま使える指摘があります。大人が子供を褒めるときは大人の基準で褒めている。しかし本人が求めているのは、自分の基準でこだわった点を認められることだ——という内容です。

そして、褒めることで自信をつけさせても、実力以上に過大評価してしまったり、周りからの評価を得られずに元に戻ってしまったり、自他の評価のギャップにストレスを感じるようになったりすることが起きうると注意しています。

これは子供に限った話ではありません。職場で「承認が足りないから褒めよう」という施策が空回りする理由が、ここに書かれています。基準を相手の側に置かないかぎり、褒めることは認めることになりません。

国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター「生徒指導リーフ Leaf.18『自尊感情』?それとも、『自己有用感』?」

どちらを先に育てるか

結論から言えば、順序は自己肯定感が先です。ただし「先に完成させる」という意味ではありません。

自己肯定感が低い状態で自己効力感だけを積み上げようとすると、先ほどの右上のマスに入ります。成果は出ますが、成果が止まった瞬間に支えがなくなります。土台が不安定なまま積み上げるので、長続きしないのです。

一方で、自己肯定感が整うのを待ってから行動に移そうとすると、いつまでも始まりません。そして研究が示しているとおり、自己肯定感は自己効力感を経由して行動になります。経路を使わないかぎり、土台は土台のままです。

実際の進め方は、交互になります。

  1. 自分を認められる状態をつくる……できたかどうかと、自分の価値を切り離す
  2. 小さく試す……やれそうな範囲で実際にやってみて、できたことを確認する
  3. 結果と自分の行動のつながりを言葉にする……「自分の何が効いたのか」が分かって、はじめて次の見通しになります
  4. 1に戻る……うまくいかなかったときに、存在の否定に流れ込んでいないか確かめる

企業研修で二つを切り離さない理由

当協会の研修で自己肯定感と自己効力感の両方を扱うのは、ここまで見てきた理由によります。

自分の価値を認められていない状態で「自分にはできる」という確信だけを高めようとしても、土台が不安定なため長続きしません。失敗したときに、能力への疑いが存在の否定にまで及んでしまうからです。自己肯定感という土台の上に自己効力感を積み上げることで、失敗を恐れず挑戦し続けられる状態を目指します。

管理職の研修で、先に本人のケアを扱うのも同じ理由です。余裕を失った管理職は保身に入りやすく、部下への関わり方だけを変えようとしても戻ってしまいます。

研修の組み立て方は自己効力感を高める企業研修の作り方で、組織単位で扱う場合は組織効力感とはで解説しています。自己肯定感の側から組織開発を見た整理は、一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会の自己肯定感と自己効力感が企業の組織開発に与える影響にまとめてあります。

企業研修のご案内

よくあるご質問

自己肯定感と自己効力感の違いを一言で言うと何ですか?

見ている対象が違います。自己肯定感は「自分は、ここにいていい」という自分の存在についての感覚、自己効力感は「自分なら、これができる」という特定の課題を遂行できるという見通しです。自己肯定感はその人全体に及びますが、自己効力感は課題や場面ごとに別々に存在します。

自己肯定感と自己効力感は相関しますか?

強く相関します。初期の一般性自己効力感の尺度は、ローゼンバーグの自尊感情尺度との相関が r = .75〜.91 に達していました。ただし相関が高いことは同じものを測っていることを意味しません。チェンらは自尊感情と区別できる項目で新しい尺度(NGSE)を作り直し、一般性自己効力感は動機づけに関する変数と、自己肯定感は感情に関する変数とより強く関係することを示しています(Chen, Gully & Eden, 2004)。

自己効力感が高いのに自己肯定感が低いことはありますか?

あります。実務でもっとも相談の多い組み合わせです。職場では評価が高く、本人も「自分ならできる」と思えているのに、自己肯定感が低いままだと、自信が「成果を出している自分」にのみ結びつきます。手を止めると価値が下がる気がして休めない、達成しても埋まらない、異動や昇進で成果が出ない時期に入ると支えが一度に失われる、といったことが起こります。成果は能力の証明にはなりますが、存在の承認にはならないためです。

自己肯定感と自己効力感は、どちらを先に高めるべきですか?

順序は自己肯定感が先です。ただし先に完成させるという意味ではありません。自己肯定感が低い状態で自己効力感だけを積み上げると、土台が不安定なため長続きしません。一方で、研究では自己肯定感の効果の51〜74%が自己効力感を経由して行動に結びついていました。経路を使わないかぎり土台は土台のままなので、実際には「自分を認める」と「小さく試す」を交互に進めます。

自己有用感とは何が違いますか?

他者の存在が必要かどうかが違います。国立教育政策研究所の生徒指導リーフ Leaf.18 は、自己有用感を「他人の役に立った、他人に喜んでもらえた」という感覚であり、相手の存在なしには生まれてこない点で自尊感情や自己肯定感とは異なると説明しています。同資料は、自己有用感の獲得が自尊感情につながることは想像しやすいが、自尊感情が高いことは必ずしも自己有用感の高さを意味しない、とも述べています。

自己肯定感と自己効力感は測れますか?

どちらも尺度があります。自己肯定感はローゼンバーグ自尊感情尺度(RSES、10項目。日本語版は山本・松井・山成, 1982)、自己効力感は一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES、16項目。坂野・東條, 1986)が広く使われています。別々の尺度で測るという事実そのものが、二つが別の概念として扱われてきたことを示しています。

なぜ企業研修で自己肯定感と自己効力感の両方を扱うのですか?

自分の価値を認められていない状態で「自分にはできる」という確信だけを高めようとしても、土台が不安定なため長続きしないからです。失敗したときに、能力への疑いが存在の否定にまで及んでしまいます。自己肯定感という土台の上に自己効力感を積み上げることで、失敗を恐れず挑戦し続けられる状態を目指します。

まとめ

自己肯定感と自己効力感は、見ているものが違います。自己肯定感は自分の存在についての感覚、自己効力感は特定の課題を遂行できるという見通しです。

押さえる点は5つです。

  1. 自己効力感は課題ごとに決まる。「あの人は自己効力感が高い」という言い方は、厳密には成立しません
  2. 効く場所が違う。自己効力感は動機づけに、自己肯定感は感情に強く関係します(Chen et al., 2004)
  3. 自己肯定感は自己効力感を経由して行動になる。効果の51〜74%が自己効力感を通っていました
  4. 一方だけ高い状態がある。自己効力感が高く自己肯定感が低い人は、成果を出しながら消耗します
  5. 自己有用感は三つめの別概念。相手の存在なしには生まれません

今日からできることをひとつ挙げるなら、最近うまくいかなかったことを一つ思い出して、「この課題ができなかった」と「自分はダメだ」が自分のなかでつながっていないか確かめてみてください。つながっているなら、そこが土台を手当てする場所です。

さらに詳しく学びたい方へ

本記事は、工藤紀子『自己効力感の教科書』(総合法令出版)の内容をもとに構成しています。

同書では、自己肯定感を土台として自己効力感を育てる順序を、自己効力感を高める4つの源泉それぞれに章を設けて解説しています。全272ページで体系的に扱った一冊です。


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工藤紀子

一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会 代表理事。専門分野は自己肯定感(セルフエスティーム)、組織開発、メンタルヘルス。著書に『レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書』(総合法令出版)、『職場の人間関係は自己肯定感が9割』(フォレスト出版)など。キリンホールディングス、KDDI、NTTグループ、住友化学、ユニリーバ、日本赤十字社ほかで企業研修を担当し、受講者はのべ28,000名以上。

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