自己肯定感との関係

自己肯定感と自己効力感は何が違うのか

自己肯定感と自己効力感は、どちらも自分に向けられた感覚を指す言葉ですが、見ているものが違います。

自己肯定感は、自分の存在そのものを肯定する感情です。自己効力感は、特定の課題を達成できるという能力についての見通しです。

言いかえれば、自己肯定感が「自分は存在していていい」という感覚であるのに対して、自己効力感は「自分ならできる」という感覚です。

自己肯定感 自己効力感
見ているもの 自分の存在・価値 特定の課題を遂行する能力
範囲 その人全体に及ぶ 課題・場面ごとに異なる
働き 安心の土台になる 一歩踏み出す力になる

二つは互いに高め合う関係にある

自己肯定感が高い人は、自分の能力や価値を肯定的に評価しているため、新しいことに挑戦する意欲が高くなります。成功体験を積む機会が多くなり、結果として自己効力感も高まります。

一方、自己効力感が高い人は、課題を達成できると信じて行動できます。失敗を学びの機会と捉えられるため、自己肯定感も高まっていきます。

当協会が自己肯定感を土台と位置づけ、その上に自己効力感を育てるという順序を重視しているのは、この関係によります。自分の価値を認められていない状態で「自分にはできる」という確信だけを積み上げようとしても、土台が不安定なため長続きしないからです。

違いと関係を詳しく

バンデューラ自身が二つに引いた線、動機づけと感情で効く先が分かれることを示した研究、効果の51〜74%が自己効力感を経由していたという媒介分析、そして「自己効力感は高いのに自己肯定感が低い」状態に何が起きているかまでを、記事でまとめています。

自己効力感の効果

自己効力感が高いと、何が変わるのか

自己効力感が高いと、成績や能力そのものが上がるわけではありません。変わるのは行動です。

バンデューラは、自己効力感が次の3つに影響すると述べています。

  • どの課題を選ぶか…挑戦的な目標を選ぶか、失敗しない範囲にとどめるか
  • どれだけ粘るか…うまくいかないときに方法を変えて続けるか、早くあきらめるか
  • 失敗をどう受け止めるか…努力や方法の問題と捉えるか、能力の問題と捉えるか

この3つが積み重なった結果として、成果や健康状態に差が生まれます。効果は自己効力感から直接生じるのではなく、行動を経由して現れる——この順序を押さえておくと、後述する効果の理由が理解しやすくなります。

目標を達成しやすくなる

自己効力感が高い人は、達成できる見通しを持てるため、行動に移すまでが速くなります。さらに、途中でつまずいてもやり方を変えながら続ける傾向があります。

多くの目標は、一度で成功しないから達成できないのではなく、うまくいかない段階で手が止まるから達成できません。自己効力感は、この「止まりやすい地点」を越える力として働きます。

ストレスに強くなる

同じ出来事でも、「対処できる」と思えるかどうかでストレスの感じ方は変わります。対処できる見通しがあれば、その状況は脅威ではなく課題として認識されます。

自己効力感が低いと、困難な場面そのものよりも「自分には無理だ」という予測が先に立ち、不安が高まりやすくなります。

学び続けられる

新しいことを学ぶ過程では、必ずできない時期があります。自己効力感が高い人は、この時期を「まだできていないだけ」と捉えられるため、学習を続けられます。

逆に自己効力感が低いと、できない時期を「向いていない証拠」と解釈し、早い段階で手を引いてしまいます。

人との関わり方が変わる

自己効力感は、対人場面にも及びます。「伝えれば分かってもらえる」「相談すれば力を貸してもらえる」という見通しがあるかどうかで、行動が変わるためです。

見通しが持てないと、相談も交渉も起こりません。関係の質は、働きかけの量に左右されます。

健康行動が続きやすくなる

運動、食事、禁煙、服薬。健康に関わる行動は、知識があっても続きにくいという共通点があります。ここで効くのが「自分なら続けられる」という確信です。

この領域は研究の蓄積があり、健康行動の改善・維持、慢性疾患の管理、高齢者の健康維持との関係が報告されています。詳しくは自己効力感が健康に与える影響で、参照した研究とあわせて解説しています。

仕事の場面で現れる効果

組織のなかでは、自己効力感の差が次のような形で表れます。

  • 手を挙げるかどうか…新しい役割や難しい案件を引き受けるか
  • 相談できるかどうか…行き詰まったときに早めに助けを求められるか
  • フィードバックの受け止め方…改善点の指摘を成長の材料と捉えられるか
  • 失敗後の回復…次の挑戦までにかかる時間

エンゲージメントや定着率といった指標は、こうした日々の行動の積み重ねの結果として動きます。企業研修で自己効力感を扱う理由はここにあります。

注意:効果は「課題ごと」に現れる

自己効力感でよく誤解されるのが、「その人の自己効力感が高い/低い」という捉え方です。

自己効力感は課題ごとに異なります。営業では高いが人前での発表では低い、育児では高いが職場では低い——こうしたことが普通に起こります。

そのため、「あの人は自己効力感が低い」と人を評価するのではなく、「どの場面で低いのか」を特定することが出発点になります。対処のしかたが変わるからです。

効果はどこから生まれるのか

自己効力感は生まれつきの性格ではなく、4つの源泉から形成されます。

  • 成功体験(マスタリー体験)
  • 代理体験
  • 言語的説得
  • 生理的・情動的状態

つまり効果を得たければ、この4つに働きかければよいということです。それぞれの詳細は次のページで解説しています。

自己効力感の効果を詳しく

自己効力感を高める方法

自己効力感を高める前に知っておきたいこと

自己効力感は、生まれつき決まっている性格ではありません。働きかければ育てられます。

ただし、やみくもに「自信を持とう」と言い聞かせても変わりません。バンデューラは自己効力感が4つの源泉から形成されるとしており、高める方法もこの4つに整理できます。順番に見ていきます。

その前に、押さえておきたい前提が2つあります。

前提1:自己効力感は課題ごとに異なる

「自己効力感が低い人」というものは、厳密には存在しません。「この場面で低い」があるだけです。

仕事では高いのに人前で話すときは低い、といったことは普通に起こります。ですから最初にやるべきは、どの場面で低いのかを特定することです。対象がはっきりしないと、打ち手も決まりません。

前提2:土台となる自己肯定感を確認する

自分の存在を認められていない状態で「できる」という確信だけを積み上げようとしても、長続きしません。失敗したときに、能力への疑いが存在の否定にまで及んでしまうからです。

うまくいかないときに「自分はダメな人間だ」というところまで落ち込むようであれば、先に自己肯定感との関係を確認してください。

4つの源泉にそって高める

1. 成功体験を「設計する」

4つのなかで最も強く自己効力感を高めるのが、自分でやってできたという経験です。ただし、ここには落とし穴が2つあります。

ひとつは、簡単すぎる課題では効力感が育たないこと。努力せずにできたことは「自分の力でやり遂げた」という感覚になりません。

もうひとつは、繰り返しの失敗はむしろ自己効力感を下げること。「挑戦させればいい」という発想は、失敗が続けば逆効果になります。

そこで必要なのが設計です。

  • 大きな目標を、達成できる単位まで分解する
  • 少し努力すれば届く難易度に調整する
  • できたことを、その場で確認する(記録に残すと効果的です)
  • 難易度を段階的に上げていく

「毎日30分運動する」が続かないなら、「まず5分」から始めます。小さすぎると感じる単位から始めるのが、結果的に速い方法です。

2. 代理体験を得る

自分と似た立場の人が、その課題をやり遂げるのを見る経験です。「あの人にできたなら、自分にもできそうだ」という見通しが生まれます。

重要なのは「自分と似ているか」です。遠くかけ離れた成功者の話は、かえって「自分とは違う」という結論を強めてしまいます。

  • 同じ部署、同じ経験年数の人の例を探す
  • 完成形ではなく、つまずきながら進んだ過程を知る
  • 少し前の自分と近い状況にいた人に話を聞く

職場でメンター制度やペア制度が機能するのは、この代理体験が働くためです。

3. 言葉のかけ方を変える

周囲からの「あなたならできる」という言葉は、自己効力感を支えます。ただし単独では効果が長続きせず、根拠がなければ逆効果にもなります。

実際には難しい課題を「できる」と言われて失敗すれば、自己効力感はかえって下がります。声をかける側が意識したいのは次の点です。

  • 結果ではなく、具体的な行動や工夫をほめる
  • 「すごい」ではなく「ここをこう変えたから通ったね」と事実を伝える
  • できていない点を伝えるときは、能力ではなく方法の問題として扱う

自分自身に対しても同じです。「自分はダメだ」ではなく「この方法が合わなかった」と言い換えるだけで、次の行動が変わります。

4. コンディションを整える

疲れている、眠れていない、気分が沈んでいる——こうした状態を、人は「うまくいかない徴候」として解釈します。同じ課題でも、体調が悪い日は「できない気がする」のはこのためです。

  • 睡眠を確保する
  • 大事な判断や挑戦を、消耗している時間帯に置かない
  • 緊張を「失敗の予兆」ではなく「準備が整った状態」と捉え直す

精神論の前にコンディションを整えるべき理由がここにあります。自己効力感は、気力ではなく状態にも左右されます。

今日から始める3ステップ

  1. 場面を1つに絞る…「自己効力感を高めたい」ではなく「会議で発言する場面」まで具体化します
  2. 確実にできる単位まで下げる…「発言する」が重いなら「質問を1つ用意して持参する」まで下げます
  3. できたことを記録する…記憶は都合よく上書きされます。できた事実を残すことが、次の成功体験の土台になります

やってはいけないこと

  • いきなり大きな挑戦をさせる…失敗すれば自己効力感は下がります
  • 根拠のない励まし…裏切られたときの反動が大きくなります
  • 他人との比較で動機づける…能力の問題として受け取られやすくなります
  • 結果だけを評価する…過程の工夫が見えないと、何を再現すればよいか分かりません

効果を確認する

取り組みの前後で測定すれば、変化を数値で確認できます。日本語で使える尺度と選び方は自己効力感の測定尺度で解説しています。

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自己効力感を高める方法を詳しく

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