組織効力感とは、組織やチームのメンバーが共有する「自分たちならやれる」という確信のことです。個人についての「自分ならできる」が自己効力感であるのに対し、組織効力感は「私たちならできる」を指します。
もとになっているのは、自己効力感と同じくアルバート・バンデューラの社会的認知理論における collective efficacy(集団効力感) という概念です。
組織効力感とは何か
経済産業省 近畿経済産業局が公開している人的資本の可視化ツールでは、組織効力感が次のように説明されています。
組織効力感(Collective efficacy)とは、組織やチームメンバーが共有する「自分たちならやれる」という確信や信念を指す。個々人の自己効力感の単純な総和ではなく独立したグループ特性である。
経済産業省 近畿経済産業局「人的資本相関可視化ツール(ver.1.0)参考資料」
ここで重要なのが、「個々人の自己効力感の単純な総和ではない」という点です。
自己効力感の高い人を集めれば組織効力感が高くなる、というわけではありません。一人ひとりが「自分ならできる」と思っていても、「この人たちとならできる」と思えなければ、組織としては力になりません。組織効力感は、メンバー間の相互作用のなかで生まれる、組織そのものの性質です。
自己効力感と組織効力感の違い
| 自己効力感 | 組織効力感 | |
|---|---|---|
| 感覚 | 私はできる | 私たちならできる |
| 対象 | 個人の遂行能力 | 集団としての遂行能力 |
| どこに宿るか | 個人のなか | メンバー間の相互作用のなか |
| 育て方 | 4つの源泉に働きかける | 協働の経験・共通の目的・相互の信頼を育てる |
両者は別のものですが、無関係ではありません。個人の自己効力感が育っていなければ、メンバーは挑戦も相談もしません。相互作用そのものが起こらないからです。この関係は後述します。
なぜいま注目されているのか
個人の育成に力を入れている組織ほど、次のような壁に突き当たります。
- 優秀な人はいるのに、組織として成果が出ない
- 個人は成長しているのに、離職してしまう
- 1on1を実施しているが、チームとしての一体感がない
- 心理的安全性はあるが、挑戦が起きない
- 部署間が分断されている
これらは個人のモチベーションの問題として扱っても解けません。「自分ならできる」人が集まっているのに成果が出ないとき、欠けているのは「この人たちとならできる」という感覚のほうです。
個人の自己効力感を高める施策が広まった結果として、次の論点が見えてきた——という順序で捉えると理解しやすいでしょう。
組織効力感を構成する5つの要素
前述の近畿経済産業局の資料では、組織効力感を測る設問が5つの観点で設計されています。何を育てれば組織効力感が高まるのかを考えるうえで、有用な整理です。
- 協働とチームワーク…お互いの良さを活かしあい、協力して働いているか
- 共通の目的・ビジョン…パーパスやミッションが共有され、根付いているか
- 団結力・結束…コミュニケーションを通じて意思が共有され、所属感と信頼感があるか
- レジリエンス…環境の変化や予期せぬ出来事を乗り越えられると思えるか
- メンバーの能力への信頼…目標達成に必要な力がこのメンバーにあると思えるか
注目したいのは、5つのうち4つが「他のメンバーをどう見ているか」に関わる点です。組織効力感は、自分の能力への評価ではなく、周囲への信頼の総体として現れます。
自己肯定感が、組織効力感の起点になる
ここからは、当協会が企業研修を通じて捉えている見方です。
組織効力感は「メンバーを信頼できるか」で決まりますが、他者を信頼する力は、自分を認める力から始まります。自己肯定感を土台と位置づけているのは、この順序があるためです。
- 自分を認められる(自己肯定感)
- → 他者を認められる
- → 意見を言える
- → 助けを求められる
- → メンバーを信頼できる
- → 「このチームならできる」が形成される(組織効力感)
逆から見ると分かりやすくなります。自分に自信が持てない人は、他者の評価が気になり、意見を言えず、助けも求められません。相互作用が起きないため、組織効力感が育つ機会そのものが生まれないのです。
心理的安全性が「あるのに挑戦が起きない」組織で何が欠けているのかも、この順序で説明できます。発言が許される状態があっても、発言する側に土台がなければ行動は起きません。
どう測るか
組織効力感は、社員サーベイの設問として測定できます。前述の5つの観点を、5段階(あてはまらない〜あてはまる)で回答してもらう形式が、近畿経済産業局の資料で示されています。
個人の自己効力感の測定とは別の指標である点に注意してください。両方を測れば、「個人は高いが組織は低い」といった状態を切り分けられます。個人の自己効力感の測り方は自己効力感の測定尺度で解説しています。
企業研修での扱い
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会では、自己肯定感と自己効力感を組み合わせた企業研修を行っています。個人の「自分ならできる」を育てることは、組織の「私たちならできる」が生まれる前提にあたります。
研修では座学だけでなく、グループワークを取り入れています。相互作用のなかでしか育たない部分があるためです。
人事・管理職の実務として何から着手すればよいかは、協会サイトの組織効力感の高め方|「私たちならできる」を育てる5つのステップで解説しています。
※『組織効力感』は株式会社Momentorの登録商標です。本記事では概念の解説として用いています。
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よくあるご質問
組織効力感と自己効力感は何が違いますか?
自己効力感は「私はできる」という個人の遂行能力への確信、組織効力感は「私たちならできる」という集団としての遂行能力への確信です。自己効力感が個人のなかに宿るのに対し、組織効力感はメンバー間の相互作用のなかで生まれます。
自己効力感の高い人を集めれば、組織効力感は高まりますか?
高まるとは限りません。近畿経済産業局の資料でも、組織効力感は「個々人の自己効力感の単純な総和ではなく独立したグループ特性」と説明されています。一人ひとりが「自分ならできる」と思っていても、「この人たちとならできる」と思えなければ組織の力にはなりません。
組織効力感は何で構成されているのですか?
近畿経済産業局の人的資本可視化ツールでは、協働とチームワーク、共通の目的・ビジョン、団結力・結束、レジリエンス、メンバーの能力への信頼という5つの観点で測定する設計になっています。このうち4つは「他のメンバーをどう見ているか」に関わるもので、組織効力感が周囲への信頼の総体として現れることを示しています。
心理的安全性とはどう違いますか?
心理的安全性は「発言しても罰せられない」という環境の性質、組織効力感は「私たちならやれる」という達成への確信です。心理的安全性があるのに挑戦が起きない組織では、発言が許される状態はあっても、発言する側に土台がないことがあります。
組織効力感を高めるには何から始めればよいですか?
当協会では、個人の自己肯定感を土台と位置づけています。自分を認められることが他者を認めることにつながり、意見を言える・助けを求められる状態を経て、メンバーへの信頼が育ちます。相互作用が起きなければ、組織効力感が育つ機会そのものが生まれません。
